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2011-12-25

十四週目(12/24-12/27)

本場のキリスト教のクリスマスを味わう。

12/24の深夜12時が近づくと教会の鐘が鳴り始め、人が続々と集まり始める。
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この教会はブリュッセル中央駅の近くにあるサン・ミッシェル大聖堂。

クリスマスのミサはキリスト教徒以外に公開しているところは少ないらしいが、ここだけは特別に旅行者など信者以外にも公開している。

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中は大聖堂というだけあってなかなか立派なのだが、いつもと少しだけ違ってクリスマスっぽい飾りつけがされている。

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教会に訪れるたびにパイプオルガンの演奏を聴いてみたいとずっと思っていたが、ついに念願叶う。
あの大空間に音が響き渡るとものすごく神聖な感じがする。

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側廊にはキリスト生誕の馬小屋の様子を表した模型や、

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なぜかジャパナイズされたキリストが…。
説明文がむちゃくちゃな日本語だったが、どうやら日本の敬虔なキリスト教徒たちらしい。

式典自体は終始厳かな雰囲気で淡々と進み、聖書の一説っぽいものを朗読したり、聖歌のようなものを歌ったりしていたが、いかんせんフランス語か何語かもわからないのでお経のようにしか聞こえない…。


12/25はグラン・プラスでイベントがあるというので行ってみる。
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11月末からのライトアップ期間中、毎週日曜日にライトアップショーのようなものをやっているのだが、この日は特別にゴスペル隊のライブをやっていた。

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その後はいつもどうりのライトアップショー。これは何度見てもきれい。

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普通に街の広場でこんなイベントが行われてしまうのだからヨーロッパの街は面白い。


ベルギーのクリスマスの印象は日本とはだいぶ違う。一応店なんかもクリスマスの飾りつけはしているものの、そこまでごり押しはしてこない。
街も24・25日だからといって特別ににぎわってるわけでもなく、いつも通りな感じ。むしろ人が少ないかもしれない。
というのも、クリスマスは家族で家で過ごすのが習慣らしく、学校の人たちも自分の国に帰っている。

ならばみんなひっそりキリストの生誕を祝っているのかと思いきや、今ではヨーロッパの人々でもクリスマスは単なるお祭りと思っている人も多いらしい。ベルギーがおとなしいだけなのだろうか。

そしてこの静けさを目の当たりにすると、あの日本のクリスマスの一大イベント感は何なんだろうと思ってしまう。

十三週目(12/18-12/20)

先週はイギリスへ行き、今週はロッテルダムに行く。

つまりスタジオが追い込まれる。
ひたすら最終エスキスに向けて作業をする3日間。

ロッテルダム(12/21-12/23)

1日目(2011/12/21)
EUROLINEでロッテルダムに。
安くこれるのはいいが、ブリュッセル発が1時間も遅延…。
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ロッテルダム中央駅では大屋根のような構造物が建設中。

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駅付近は広い道路と高層ビルが立ち並ぶ。
車の交通量が多く、広い歩道にも人があまり歩いていないため閑散としていてさびしい感じがする。

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路上やちょっとしたオープンスペースにアート作品がよく置いてあって、パブリックアートが盛んそう。

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OMAの事務所が駅近くにあるというので見に行ってみる。
噂には聞いていたが世界的建築事務所なのに、本当にどこにでもありそうなビルにテナントとして入っている。

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中心地はオフィスビルが多く、基本的に人気が少ないように感じたが、歩行者専用のモールのようなところだけはにぎわっていそう。

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ロッテルダムは港町で、港付近では船やらクレーンやらがライトアップ。ライトの色が原色ばかりなのがオランダっぽい。

2日目(2011/12/22)
ロッテルダムにはOMAの作品がたくさんある。
まずは市内にある美術館クンストハルへ。
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前面道路はかなり広く、交通量も多い。
屋根上のKUNSTHALと書かれた長方形のボリュームが看板のようでロードサイドショップっぽい。

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この舞台のおかげで内部空間がせわしい道路と距離を置くことができているが、ここが何か具体的に使われることはあるのだろうか。

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この入口が裏の公園まで続いている。屋根の上にちょこちょこと彫刻が乗っていて面白い。

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こういう通り抜けられる空間をどうデザインするかは周辺の都市環境との関係から建築設計を考える上で重要に思う。

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入ったらいきなりレクチャーホール。遠足のちびっこ集団が何やら話を聞いていたが、独立してつくられがちなレクチャーホールをこういうふうにつくると活気を感じられていい。

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スロープが多用されていて視覚的に面白いし、階段よりも上下の空間のつながりが強く感じられる。その下にできる空間もうまく使われている。

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内部の階段がそのまま外部まで続いている。

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上って後ろを振り返るとそこにはコールハースの肖像画が。あまりに唐突すぎるのでちょっと悪ふざけ感があって面白い。

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この建物には本当にいろいろな材料が使われているが、ここの展示室は床が側溝のふたなどによく使われるグレーチング。つまり、下の階が透けて見えるので歩くのが少し怖い。

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大きい展示室ではトラスのようなオレンジ色の構造体がちらほら。

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直接出ることはできないが都市へ向けた縁側のような感じ。内と外で床、天井に高さの違いはないものの素材が違う。

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この建築のコンセプトでもあるが、建物の中を上へ下へと歩きまわれ、場所によって雰囲気が次々と変わるので回るのが楽しい。

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突如生木の柱があらわれる。何かで読んだが、これは外の公園の木が建物の内部まで侵入してきているというイメージらしい。

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ちょくちょくあるのがこのとんでもなく片持ちの手すり。構造的に必要な太さなのかもしれないが、全部太すぎて握れない。このカフェは壁の材料も特徴的。

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照明の蛍光灯もネオンサインのようだし、柱も斜め。普段体験しないような空間の要素がたくさんあって面白い。

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公園側から。こちら側の率面は大理石の印象が強い。

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クンストハルから建築博物館へと続く公園。OMAとYves Brunier(イヴ・ブリュニエ)の共同設計。

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アーティスティックで普通の公園計画とは全く異なる感じがするが、冬で緑が茂っていないせいか、土がむき出しになっている所が多くて暗い印象が強いし、自然が自由に振舞うことを許さないで全体を人工的に統制しているような感じがあって何か気持ちが悪い。これが本来の姿ではないと信じたい。

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駅前へと続く大きな道路の中央には池があって、細長い公園になっている。
左側に少し写っているが、ロッテルダムのトラムのデザインはだいぶダサい。
色は地味すぎるし安っぽい感が否めない。

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この通り沿いにはデ・ステイルのアウトによるカフェ・デ・ユニがある。
こんな風にテラスハウスの連続立面の一立面として建っているとは思わなかった。かなり異質で目立つ。

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地下鉄に乗ってデン・ハーグへ。
ロッテルダムの地下鉄駅は天井やライティングが面白い。

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道の広さより建物の高さの方が高く、圧迫感がすごい。

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驚いたことに集合住宅の地上階部分がトンネルになっていてトラムの軌道になっている。

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左のはOMAのダンスシアターのもの。反射率がかなり高く、湾曲していて周辺環境が写り込む。

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残念ながら中は入れず…。

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ハーグは歩車分離が明確なのか、トラムは通るが車は通らない広い道路が多かった。
そしてポスト・モダン的なへんな形の超高層ビルが多い。

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ショッピングストリート。

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OMAが設計した地下鉄駅。
道路にレベル差を作って入口を作るやり方は面白い。

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こんなかっこいい地下鉄駅は見たことがない。

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地下駐車場も併設されており、地上へと出ていく車が地下鉄駅の内部から見える。

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やはりここでもいろいろな素材が使われている。

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この池の端の建物はマウリッツハイス美術館で、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」を見ることができた。

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コートヤードに教会。雰囲気は完全に中世の街。

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中庭を囲む列柱廊。

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赤絨毯パサージュ。

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カラフルなライトが内部に見えるのはOMAのリノベーションプロジェクト。中には入れず…。

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ヨーロッパのどの街にでもあるんじゃないかと思われる中華街。ここは電灯が提灯のようで、それが浮いているように見えておもしろい。

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ダンスシアターのすぐ横にあった真っ白な建物。気になったので入ってみると、なんとリチャード・マイヤー設計の市庁舎と市立図書館。

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入ると、左右の各階をつなぐブリッジが前後に見える。そして徹底的に白い。

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市庁舎とは思えない大空間。

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単なる移動という人の動きでも、ここまで大胆に見せらると空間をダイナミックにする。

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こちらは図書館。市庁舎の方が感動的だが、こんなに贅沢な空間が。家具や照明が凝っていてとても公立図書館とは思えない。

3日目(2011/12/23)
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ロッテルダムにはへんな形のビルがたくさんある。

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UNスタジオのベン・ファン・ベルケルによるエラスムスブリッジ。右端の壁面が斜めになっている高層ビルはレンゾ・ピアノによるKPNタワー。

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さすがオランダは自転車大国だけあって、自転車道がかなり整備されている。
感覚としては歩道よりも車道に近く、ここをとろとろと歩いていようものなら後ろから容赦なくチリンチリンされる。

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オランダ建築博物館NAi。


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カフェテリアの天井。

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企画展の展示。OMAの台北パフォーミング・アーツ・センターの模型があった。
他にも中国の集合住宅プランの変遷などの展示も。

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ボックスのを登ったり、下りたり、くぐったりする展示方式は面白い。

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建築博物館が管理するSonneveld House Museumへ。設計はファン・ネレの工場を設計したBrinkman & Van der Vlugt。

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内部。窓が大きく明るい。各部屋が廊下でつながり、それがそのまま外観のボリュームになっていて機能主義的。

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ロッテルダム駅から電車で近郊都市ユトレヒトへ。

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さらにユトレヒト駅からバスでユトレヒト大学へ。この大学はOMAによるマスタープラン。

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そしてOMA設計のエデュカトリアムへ。斜めの壁に合わせて出入り口まで斜めに傾いている。

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地上階から斜めの線を使って、床がそのまま天井になるファサードはかなりのインパクト。

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外部と同じく内部にもスロープ。やはりスロープは高さ方向の空間のつながりを強める感じがある。
スケールが大きいので登るのがしんどいし、座ったり物を置いたりできる階段と違って、斜めの床はアクティビティを誘発しにくいような感じもある。

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ファサードのイメージ通り、どんどん上に登っていける。

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階段の空間にも多くのバリエーション。

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登りきって、床がくるんと曲がり、そのまま天井になるところ。

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通路によって素材がかえられ、雰囲気がだいぶ異なる。

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よっかかって溜まるのには良さそう。

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講義室。外部への窓が大きくて開放的。

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チープな工業製品のような材料までうまく使う。

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エデュカトリウムは歩きまわれて楽しい。この軌道が上へいったり下にいったりと立体的に展開され、その軌道上に講義室などの各室が配置されている。行き止まりのようなところはなく、様々な経路でループしている。上下方向空間のつながりが強く、歩いているとさっき通った通路を下や上に見つけることができ、様々な高さでの人々の様子がわかる。このTrajectryという回遊性を重んじるコンセプトはコルビジュエの建築的プロムナードと似ている気がした。

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カフェテリア。斜めの天井、柱、大ガラスはやはり普段体験することのできない空間をつくりだす。

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見学を途中で切り上げ、大学から歩いて30分くらいの世界遺産、シュレーダー邸へ。
思っていたよりずっと小さい。

内部撮影が禁止だったのが残念だが、家具から備え付けの棚まで徹底して3原色、水平垂直の線でデザインされている。これだけ軽い感じの外観なのに1階部分だけはレンガの組石造というのは驚き。デモンストレーションを見ると、2階の可動間仕切りのやり方によってかなり使い方も雰囲気も変わりそうに思う。特にバスルームの脱衣所が間仕切りによって廊下となるところが面白かった。ただ、家が小さいので間仕切りのせいでごちゃごちゃとしている感じもある。

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もう一度エデュカトリウムに戻る。さっき見た空間とは全然違う雰囲気、作り方のあるところがあって驚き。

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バスケットバー。上がバスケットコート、下がカフェになっている。設計はNLアーキテクツ。プログラムの組み合わせが面白いが、バスケットコートの床はちゃんと平坦になっておらず現在閉鎖されているようで残念。カフェの天井からバスケの様子が見えるように作られている。